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コラム(1994年):情報の歴史をめぐる物語(2) 7~12
7.プレゼンテーション
弁論説得のギリシャ式。テキスト提示の中国式。
情報は上手に伝達されてこそ価値あるものだが、この伝達手法の歴史にも、東西のお国柄がある。
西のギリシャが口誦による弁論術を重視したのに対し、東の中国は文字による視覚文化を尊んだ。
紀元前5世紀頃のソフィスト(詭弁派)をはじめ、ソクラテス、プラトン、アリストテレスと続くギリシャ哲人たちの系譜は、実は問答と説得の歴史でもあったわけだが、一方の中国ではすでに前2世紀には、世界最初の情報百科事典ともいうべき「淮南子(えなんじ)」が完成している。
ビジネスの世界でも、企画書のプレゼンテーションには人それぞれ癖がある。
詭弁を操るギリシャ派、テキスト重視の中国派、あなたはどちら?
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8.情報操作
神の名のもとに”笑い”を抹殺。
いつの時代にも、ときの権力者たちは自分に都合の悪い情報は抹殺しようとする。
魔王のごとき所業で叡山を焼き尽くした織田信長の怒りは、宗教情報の支配にほかならなかった。
逆に中世のヨーロッパでは、写本センターであった修道院が情報を支配した。
小説、映画とともにヒットした『薔薇の名前』では、”笑い”の含まれた書籍をことごとく抹殺しようとする文書館長が連続殺人事件の主犯であった。
彼は言う。
「笑いは恐れをなくす。恐れなくして信仰は生まれない」と。
宗教上の情報操作とはいえ、なんとも笑えない時代であったようだ。
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9.情報格差
蒸気機関車が実感させた情報スピードの魔力。
情報は人より早くキャッチするほど価値がある」という”情報格差”の概念は、19世紀初頭の蒸気機関車誕生から確かなものになった。
当初、馬に先導されて進んでいた頼りない乗り物が、やがて悪魔のようなスピード力を持つにいたったとき、人々はそこに「人知を超えた情報伝達力の時代」を実感することができた。
さらに情報格差の意味を決定的なものにしたのは、少し遅れて誕生した電信網の普及であった。
「17世紀は時計仕掛けの時代、18~19世紀は蒸気機関の時代、現代は通信と制御の時代である」とはサイバネティックス(舵取り学)の創始者ウィナーの言葉。時代の流れを見事に総括している。
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10.隠語
情報は秘密にされるほど価値が高まる。
情報の価値を維持するためには、ある種の秘密保持機能が必要になる。
現代社会でいえば、特定の人間にしかわからないパスワードはその代表であろう。
古くは「おいしい」「しゃもじ」など宮中の女房言葉や、「キセル(無賃乗車)」に代表される盗賊言葉などの隠語もその好例だった。
ビジネスの世界なら、証券業界の伝統「場立ち」が、身ぶり手ぶりを使った立派な隠語になっていた。
片手で自分の頭を”ぶつ”真似をすれば「三井物産」、目を指したあと両手でバストアップの仕種をすれば「明治乳業」など、ユーモラス漂うジェスチャーで表現してしまう株式銘柄数はなんと数百。
コンピュータ売買の進展で、過去の遺物化していくのはなんとも淋しいかぎりだ。
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11.情報の識別
五感の王は眼力。
人間は五感によって外界からの情報を仕入れる。見る・聞く・触れる・嗅ぐ・味わうの五感のうち、情報収集量の8割までをカバーするのは”目”だといわれている。
その視覚情報のなかでもまず第一に飛び込んでくるのが色彩で、次が形状。
文字などは最後のほうに認識するものらしい。
この原則を憶えておけば、ビジネスでも大いに役立つ。
売場づくりにしろ広告物にしろ、まずカラーから入り、次にフォルムやレイアウト、テキスト類はそれらの締めくくりに押さえておけばいいわけだ。
もっとも人間には第六感という特殊な識別法もあるので、計算外のハプニングが起こることも。
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12.情報探索
人間の欲望に憑りついたファミコン産業。
大航海時代の昔から、人は未知なるものや隠された情報の存在を知ると、その謎を解明せずにはいられない根源的な欲望をもっている。
いまいちばん元気な業界であるファミコン産業も、この人間的探索欲をうまくくすぐったからこそ、これだけの巨大産業に成長したのだといえる。
爆発的ブームとなったスーパーマリオやドラクエなど、ロールプレイングゲームと呼ばれるソフトには、次々とスクロールしていく画面の先に、人を魅惑する未知の情報が山盛り隠されていた。
一度はまると虜になるのは、それが私たち人間のサガそのものであるからだ。
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